CLOSED KINETIC TRAINING

ご無沙汰してました。

シーズン初めの合宿中にfirenze大学の体育学の教授 roberto piga先生の講義があった。
私は、言葉が分からない上に疲れていたので眼を開いているのが精一杯で眠気との戦いだった。
まあ、眼が冴えていても同じかも知れないし、やってくれるだけありがたいと思わなければいけないのだろう。

ところで、私は、日本にいたころは、あまり大学の先生の話を聴けなかったし、聴こうともしなかった。また、15年前には、大学院で勉強してきたフィジカルコーチが、いろいろ理論を説いていたが、説得力に欠けるものが多かったし、日本代表チームが、陸上のスペシャリストを呼んで短期間のフィジカルトレーニングを行ったと聞いて呆れた記憶がある。
陸上とサッカーの違い、ボディービルダーとサッカー選手の違いを区別せずに話されるとがっかりしてしまう。
しばしば現場の指導者と学問でのサッカー関係者には温度差があることがある。
これは、栄養士と調理師の関係とよく似ている。いくら栄養師が必要な栄養のバランス、量の重要性を言っても それを作るのは、調理師であり、また、それを食べるのは選手である。
以前 エスパルスに在籍していた時、ぺリマンコーチが、大学の先生に対して、選手の現状(何が必要で 何が十分か)を教えてくれれば、それを 現場の我々が行うので 何をやった方が良いとかどういうトレーニングをやった方が良いとかまでは言う必要がない。と言っていたが、それはある意味でお互いの専門を尊重することであると思う。

それぞれのスポーツにおけるフィジカルの特異性は、大変重要であり、最終的には、現場も学者もそれをどう理解するかである。
週2試合というスケジュールの中でフィジカルに費やされる時間は限られており、監督からしてみれば、できる限り時間を戦術、技術練習あるいは、休養に回したいのであるし、戦術、技術練習が、やり方次第でフィジカルトレーニングを兼ねることも十分可能である。
ブラジルは、1970年のメキシコワールドカップで優勝して以来、勝てない時期があったが、それを分析した学者が、フィジカルの重要性を説き、ブラジルは、一時期、トレーニングがサッカーのためなのか分からないような練習、つまり、ボールを全く触らないトレーニングをしていた時期がある。そして、1994年のアメリカ大会では、大半の時間をフィジカルトレーニングに費やし、成功している。
しかし、現在のフィジカルコーチは、いかにボールと一緒にフィジカルを行うかをテーマにメニューを作っているという。
20年前とは違った考え方である。これは、時代が流れているのではなく、勝つためにチーム、選手を分析し、自分たちに必要な物を取り入れているのである。
間違ってはいけないことは、現代サッカーとかモダンサッカーとかと評し、トレーニングにも流行があるように錯覚するが、世界のトップの指導者は、自らのチームを研究し、医学的、戦術的ベースをもとに新しいもの、忘れられた物を取り入れていくのである。
分析できない指導者、他のチームがやっていることばかり気になる指導者 つまり、考えない指導者は、失格である。
サッカーには、流行など無いのだ。
ところで、たまにフィジカルトレーニングを行って選手を壊してしまうことによく出くわす。
私の経験から、あるトレーニングをやるとフィジカルが向上するということをよく聞くが、そのトレーニングの長所ばかり主張して、短所を考慮できず、壊された選手も多くみている。選手を強くすることは、それだけ危険が伴うものである。
そんな時、生理学、運動生理学、解剖学、バイオメカニック等の基礎がきっちりしていれば、治療、リハビリ、トレーニングに大変プラスになる。それに治療、コンディション作り等で壁にぶつかった時、基礎がしっかりしていればそれを乗り越えられるので 理論は、現場にとって重要である。
私たちの仕事は、選手が現場に速やかに復帰し、怪我、事故を未然に防ぎ、フィジカルコンディションをアップさせることであるので、学者たちとは、上手くやっていかねばならない。

この教授は、現場で行われているトレーニングを理論化すること、また、間違っているトレーニングを理論的に指摘することが私の仕事であると言っていた。最近の数年間、JUVEの有名選手のフィジカルアドバイザーを務め、かなり良い結果を出しているようだ。(この選手は、ここ数年、怪我から復帰し、コンディションも良く、コンスタントに試合に出ているし、代表にも復帰した。巷で良いフィジカルコーチがついたという評判だった)
彼が言うのには、open kinetic trainingとclosed kinetic torainingを常に考える必要があると言っていた。
選手のフィジカルトレーニングにおいてのトレーニングは、99%Closed Kinetic trainingであるべきだと言っていた。

私も同感である。例えば、大腿四頭筋の強化を考えた場合、座って 「leg curl machine」と「踏み台昇降」とでは、全く違ってくる。
「強化する」とは、ただ筋肥大させることでもないし、筋力をアップすることでもない。「役に立つ筋」にすることなので、その筋を使った動きがスムースで、スピーディーにすることであり、その関係する筋群すべてを再教育することである。
その選手の必要な動き、特徴を把握し、その動きをスピーディーにすることが重要で筋力をアップすることでその動きが良くなることである。
これは、簡単で当たり前なことであるが重要である。
そう考えると、長崎先生(焼津の循環器の医師)が言っているように「サッカーのフィジカルトレーニングの究極」は、「サッカー」をやることであるのだ!
常にボールと一緒にやるフィジカルトレーニングは、これを裏付けているし、こんな話を聞いたことがある。
ピアニストには、ウォーミングアップのための曲があると聞いたことがあるが ピアニストは、演奏の前に肩、手首を回したり、ストレッチをしたりしないのか、演奏の前にそのような仕草を見たことがない。最初から最後までピアノを弾いている気がするけどどうなのだろうか。
バレリーナは、特別なトレーニングをバレーのためにするのであろうか。バレリーナがダンベルを使ったトレーニングなど見たことがない。
相撲取りが、相撲以外のトレーニングをするのだろうか。見たことがない。
これらは、科学が取り入れられていない遅れた競技なのか?それとも 最も進んでいるのか?
私は、後者だと思う。




PHTO; BROCCHI選手とストレッチング

コメント

  1. なるほど・・・と感心させられました。
    その競技(演技などなど)の中に
    そのことに必要なトレーニングが含まれているということですね。

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