肉離れ!
国際試合の為にリーグが中断する1週間は、帰国しても良いという条件で契約をした。しかし、同僚には、そんなことは関係ない。遠藤ばかりずるいという感覚がある。
私からしてみれば、この権利を勝ち取るためにどれだけ苦労してきたか考えてみろ!と言いたいところだが、そういう訳にはいかない。
結局、その分どこかで埋め合わせをしなければならない。その埋め合わせは、全遠征に帯同する。練習が休みの時の怪我人の治療は私がやる。という事をドクターと話して決めた。
アウェイの試合は、21時から始まる試合が多く、寮に戻るのは、朝3時半になる。その朝11時から練習が始まるので、9時過ぎには、更衣室に行き準備が始まる。
ここ最近は、アウェイの試合が多いので若くない私にとってはきつい。
しかし、これも気の持ちようなのかもしれない。昔は、食って行くためにはがんばらなければと思っていたので、そんなこと感じてはいられなかった。しかし、そうでなくても食っていける(いけそう)と思うようになったので遠征の帯同はきついと思うのかもしれない。
こんな仕事を30年近くやっていれば、環境が変わり、経験がものをいうようになるが、それ以上に私自身の精神的な状態が変化しているんだなと思う。
そんな諦めのなか、前回の遠征では、バスに乗る直前に私は帯同しないという事になり、居残りして、選手を見ることになったと突然、ドクターから話があった。
私は担当していなかったので詳しく知らなかったが、ハムストリングスの軽い肉離れであった選手だ。
MRIでも、はっきりした損傷はなく、古傷と筋全体に腫れがある程度だから数日で復帰できると予測していたらしいが、選手には違和感が強く、彼を治療させるために私を残すことになったという事だった。
もちろんその選手も出発する予定だったのだ。
残っているドクターにMRIの所見など今までの経過の説明を受け、一緒にエコーをみながら現状を話し合った。
ところで、ハムストリングスの肉離れの区分と完治までの期間を多くのドクターが研究し、発表しているが、これらは単なる目安でしかなく、最終的に医療グループがOKを出せるのは、「痛み」、「筋力の回復」、「筋の連鎖のアンバランスの回復」のように思う。
「痛み」があるという事は、治っていないのだから、復帰はまだという事は誰でも分かるし、それを無視して試合に出すことはない。特例として、重要な試合で足首の捻挫のような場合は、痛め止めの注射や薬で対応するが、肉離れなどは薬や痛め止めでは対応できないし、そのあと時間がかかるので得策ではない。
「筋力の回復」においては、痛みが無くなったのでOKではなく、弱った筋をある程度まで回復させなければ、筋自体の損傷は回復していても筋力が戻っていなけければ、かなりの確率で再受傷する可能性がある。
「筋の連鎖のアンバランスの回復」と書いたが、これは私の勝手な表現であるが、拮抗筋、共同筋等のバランスが崩れている状態での復帰も再発の可能性を十分に持っている。
例えば、ハムストリングスに対しての四頭筋、中殿筋、腸腰筋等は連携する筋で、これらの筋を患部の治療と共に再教育しておかないと、患部に負荷がかかって再受傷の確立が高くなるし、それに加えてバランス(神経系)もやらなければならない。
こんな感じだ。
しかし、現場にいるともう一つの大きな問題にぶち当たり、これに悩まされることがある。
それは、選手それぞれの「痛みの閾値」である。
MRI、エコー、筋力テスト、すべてでパスしても、選手自身に「違和感がある」を訴えられると我々医療グループは困ってしまう。
MRI、エコーで画像に問題はあっても、全く痛くないし、動けるから問題ないと言って復帰してしまう選手もいれば、そうでなく全く反対の選手もいる。
ドクターが出場不可能と判断した選手が、自分の身体は自分が一番わかると言って強行に試合に出てしまった選手も過去には何人もいたが、そうなると監督と選手の話し合いで決められるので、ドクターは、医学的観点から説明したうえでそれを承知で出場するなら医療グループの責任の範囲を過ぎるので問題ない。
しかし、医学的に全く問題がないのに違和感を訴え、それから数日経っても復帰出来ない選手がいる。これには、医療グループは手を焼いてしまう。
もしかしたらもっと違う原因(腰からの影響、歯並びの影響等、外野は言いたい放題言ってくる)があるのかもしれない。おかしい、おかしいで時間だけが過ぎていってしまうことがある。
私は、これを閾値と表現したが、これは、脳の感じ方と言った方が良いのかもしれない。
その辺りのことは勉強していないので分からないが、1試合出場しなければ何千万円もの損失ともいえる選手が医学的にはOKなのに復帰できないのでは、みんなが困ってしまう。
それをドクターは判断しなければならない。
けっして楽な仕事ではない。
今日は、その選手を残して遠征に帯同したが、私のやれることはやった。あとは、筋力の回復とその違和感をどうするかだ。
ドクターは、コーチングサイドからの早急の復帰の要求に対して対抗しなければならない。
明日、帰ってどうなっているかだな。
その前に今日の試合の方が 重要だ。
私からしてみれば、この権利を勝ち取るためにどれだけ苦労してきたか考えてみろ!と言いたいところだが、そういう訳にはいかない。
結局、その分どこかで埋め合わせをしなければならない。その埋め合わせは、全遠征に帯同する。練習が休みの時の怪我人の治療は私がやる。という事をドクターと話して決めた。
アウェイの試合は、21時から始まる試合が多く、寮に戻るのは、朝3時半になる。その朝11時から練習が始まるので、9時過ぎには、更衣室に行き準備が始まる。
ここ最近は、アウェイの試合が多いので若くない私にとってはきつい。
しかし、これも気の持ちようなのかもしれない。昔は、食って行くためにはがんばらなければと思っていたので、そんなこと感じてはいられなかった。しかし、そうでなくても食っていける(いけそう)と思うようになったので遠征の帯同はきついと思うのかもしれない。
こんな仕事を30年近くやっていれば、環境が変わり、経験がものをいうようになるが、それ以上に私自身の精神的な状態が変化しているんだなと思う。
そんな諦めのなか、前回の遠征では、バスに乗る直前に私は帯同しないという事になり、居残りして、選手を見ることになったと突然、ドクターから話があった。
私は担当していなかったので詳しく知らなかったが、ハムストリングスの軽い肉離れであった選手だ。
MRIでも、はっきりした損傷はなく、古傷と筋全体に腫れがある程度だから数日で復帰できると予測していたらしいが、選手には違和感が強く、彼を治療させるために私を残すことになったという事だった。
もちろんその選手も出発する予定だったのだ。
残っているドクターにMRIの所見など今までの経過の説明を受け、一緒にエコーをみながら現状を話し合った。
ところで、ハムストリングスの肉離れの区分と完治までの期間を多くのドクターが研究し、発表しているが、これらは単なる目安でしかなく、最終的に医療グループがOKを出せるのは、「痛み」、「筋力の回復」、「筋の連鎖のアンバランスの回復」のように思う。
「痛み」があるという事は、治っていないのだから、復帰はまだという事は誰でも分かるし、それを無視して試合に出すことはない。特例として、重要な試合で足首の捻挫のような場合は、痛め止めの注射や薬で対応するが、肉離れなどは薬や痛め止めでは対応できないし、そのあと時間がかかるので得策ではない。
「筋力の回復」においては、痛みが無くなったのでOKではなく、弱った筋をある程度まで回復させなければ、筋自体の損傷は回復していても筋力が戻っていなけければ、かなりの確率で再受傷する可能性がある。
「筋の連鎖のアンバランスの回復」と書いたが、これは私の勝手な表現であるが、拮抗筋、共同筋等のバランスが崩れている状態での復帰も再発の可能性を十分に持っている。
例えば、ハムストリングスに対しての四頭筋、中殿筋、腸腰筋等は連携する筋で、これらの筋を患部の治療と共に再教育しておかないと、患部に負荷がかかって再受傷の確立が高くなるし、それに加えてバランス(神経系)もやらなければならない。
こんな感じだ。
しかし、現場にいるともう一つの大きな問題にぶち当たり、これに悩まされることがある。
それは、選手それぞれの「痛みの閾値」である。
MRI、エコー、筋力テスト、すべてでパスしても、選手自身に「違和感がある」を訴えられると我々医療グループは困ってしまう。
MRI、エコーで画像に問題はあっても、全く痛くないし、動けるから問題ないと言って復帰してしまう選手もいれば、そうでなく全く反対の選手もいる。
ドクターが出場不可能と判断した選手が、自分の身体は自分が一番わかると言って強行に試合に出てしまった選手も過去には何人もいたが、そうなると監督と選手の話し合いで決められるので、ドクターは、医学的観点から説明したうえでそれを承知で出場するなら医療グループの責任の範囲を過ぎるので問題ない。
しかし、医学的に全く問題がないのに違和感を訴え、それから数日経っても復帰出来ない選手がいる。これには、医療グループは手を焼いてしまう。
もしかしたらもっと違う原因(腰からの影響、歯並びの影響等、外野は言いたい放題言ってくる)があるのかもしれない。おかしい、おかしいで時間だけが過ぎていってしまうことがある。
私は、これを閾値と表現したが、これは、脳の感じ方と言った方が良いのかもしれない。
その辺りのことは勉強していないので分からないが、1試合出場しなければ何千万円もの損失ともいえる選手が医学的にはOKなのに復帰できないのでは、みんなが困ってしまう。
それをドクターは判断しなければならない。
けっして楽な仕事ではない。
今日は、その選手を残して遠征に帯同したが、私のやれることはやった。あとは、筋力の回復とその違和感をどうするかだ。
ドクターは、コーチングサイドからの早急の復帰の要求に対して対抗しなければならない。
明日、帰ってどうなっているかだな。
その前に今日の試合の方が 重要だ。
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