フィジカル3

以前、プリマべーラ(日本でいうサテライト)で仕事をしていた時、当時、育成部の統括部長であったフランコ バレージ氏が、18,9歳の選手と一緒に練習をしに来た。
身体は、もうひょろひょろで昔の面影もなかった。そして、ゲーム形式のトレーニングをしている時、あまりにも分かっていないディフェンス選手をみかねて 私の動きについて来いと言いて その選手を自分のすぐ後ろに置き、前に後ろに左右にと動いてその場の状況で下がるべきか上がるべきかの判断の重要性を指導していたのを憶えている。
そして、最後に、選手全員に交じって、ハーフラインからゴールラインまで後ろ向き(詳しくいうと顔は前を見ながらも身体は半身で後進している)ダッシュをしたら なんと、バレージ氏が、他の選手をおいてダントツで一位であった。
私は、ビックリした。
他の若い選手と走り方が違うし、安定しているのである。したがって、すぐに止まっても身体がぶれそうになく、また、方向転換もすぐに出来そうで安定してして、しかも速いのである。
これが、世界一のセンターバックだ。と感激したことを憶えている。
身体は決して大きくなく、その分頭の良さ、判断の良さがバレージの信条と思っていたが、後ろ走りで若い選手を置き去りにし、ダントツの一位の走りはお見事であった。
確かにバレージは、自分がマークしているホワード選手が前に走れば、自分は、後ろ向きで走らねばならないのが彼のポジションである。
もし、ホワード選手は、自分をマークしているバレージ選手を振り切れなければ、さぞかしプレーしにくいことになる。そこにバレージ選手の強さの秘訣があったのかもしれない。
もし、バレージ選手にこの後向き走りの速さが無かったら、あのバレージは無かったかもしれない。
みんな一流選手は、何か超一流なものというか特技というか特長を持っているのだ。

データが好きなフィジカルコーチは、それぞれの選手が、「試合で何キロ走るのかとか?」よりも、試合中の動きで、90分間に何回ダッシュをして、何回タックルをして、何回ターンをするか知っているだろうか。また、もっと詳しく、右ターンが多いのか、左ターンが多いのかまでも知っているのだろうか。

それを考えてトレーニングするのが フィジカルトレーニングではないだろうか。また、それを考えてメニューを作るのが、フィジカルコーチの仕事ではないだろうか。


コメント

  1. バレージ(元)選手(今でも十分通用しそう)、さすがです!
    ちなみにベッカムのケガ・・・かわいそうですね。

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  2. さすが!のエピソードですね。
    武器があるからこそ成功できた…

    そのスペシャリストのコンディション維持は計り知れない難しさがあるんでしょうね。ひと相手だけに。

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